成年後見制度 PR

法定後見制度を利用した事例を解説します

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前回は,成年後見制度の概要を解説しました。

成年後見制度には,法定後見制度と任意後見制度があるとお話しました。

成年後見制度知っておきたいこと①と書いてあります。
成年後見制度について知っておきたいこと 成年後見制度の基本を解説します成年後見制度について知っておきたいこととして,基本的なこと成年後見の概要,種類を解説していきます。...

今回は,法定後見制度を利用した事例などについて説明します。

 

法定後見制度を利用した事例について

具体的事例(法務省のホームページ参照)は以下のとおりです。この事例をみれば,後見(こうけん),保佐(ほさ),補助(ほじょ)にかかる法定後見制度のことがよく分かると思います。

後見開始の事例

本人(夫)の状況:アルツハイマー型認知症, 申立人:妻, 成年後見人:妻

概要

本人は5年前から物忘れがひどくなり,勤務先の上司や部下のことが分からなくなるなど次第に社会生活を送ることが困難な状況となった。また,日常生活においても家族の判別ができなくなり,その症状は重くなる一方で回復の見込みはなく,2年前から入院している。

そんな中,本人の弟が交通事故死して,弟の財産を本人相続することになったが,弟には借金しか残っていなかったので, 困った本人の妻が相続放棄(弟の相続に一切関わる必要がなくなって,借金などのマイナス財産についても引き継がずに済むこと(民法939条))をするために,家庭裁判所に後見開始の審判の申立てをした。

家庭裁判所の審判を経て,「本人について後見が開始」され, 夫の財産管理や身上監護をこれまで事実上行っていた「妻が成年後見人に選任」され, 妻は相続放棄の手続(民法938条)をした。

 

保佐開始の事例

本人(母)の状況:中程度の認知症, 申立人:長男, 保佐人:長男

概要

本人は1年前に夫を亡くして一人暮らしをしていたが,以前から物忘れが見られ,最近はその症状が更に進み,買物の際に1万円札を出したか5千円札を出したか,分からなくなることが多くなり,日常生活に支障が出てきたので,長男家族と同居することになった。

隣県に住む長男は,本人が住んでいた自宅が老朽化しているため,この機会にその自宅の土地と建物を売りたいと考えて,家庭裁判所に保佐開始の審判の申立てをし, 併せて土地・建物を売却することについて代理権付与(だいりけんふよ)の審判の申立てをした。家庭裁判所の審理を経て,「本人について保佐が開始」され,「長男が保佐人に選任」された。

長男は, 家庭裁判所から居住用不動産の処分についての許可の審判を受け,本人の自宅を売却する手続を進めた。

 

補助開始の事例

本人(母)の状況:軽度の認知症, 申立人:長男, 補助人:長男

概要

本人は最近お米を研がずに炊いてしまうなど,家事における失敗が多くみられるようになり,また,長男が留守の間に,訪問販売員から必要のない高額の呉服を何枚も購入してしまった。

困った長男が家庭裁判所に補助開始の審判の申立てをし,併せて本人が10万円以上の商品を購入することについて同意権付与(どういけんふよ)の審判の申立てをした。

家庭裁判所の審判を経て,「本人について補助が開始」され,「長男が補助人に選任」されて同意権が与えられた。その結果, 本人が長男に断りなく10万円以上の商品を購入してしまったときは,長男がその契約を取り消すことができるようになった。

 

成年後見人等は,どのような者が選任されますか?

成年後見人・保佐人・補助人(以下「成年後見人等」といいます)は,判断能力が不十分な本人のために,どのような保護や支援が必要かなどの事情に応じて,家庭裁判所が選任します。

成年後見人等は本人の親族が選ばれる場合があるほか,弁護士・司法書士等の法律の専門家や福祉の専門家はもちろん,福祉関係の公益法人その他の法人等が選ばれる場合があります。

なお,成年後見人等は,複数人選ぶこともできます。

 

成年後見人等の仕事について

本人の生活,医療,介護,福祉など本人の身の回りのことに配慮しながら本人を保護・支援するのが成年後見人等の仕事です。

なお,成年後見人等の仕事は,本人の財産管理や契約などの法律行為に限られていますので,日用品の購入,食事の世話,実際の介護など本人の日常生活に関する行為は除かれます。

独り身で誰も頼る人がいないとき

本人は独り者で親戚などの身寄りがまったくないため,法定後見の申立てをする人が

いない場合はどうすればよいのでしょうか。

身寄りがないなどの理由で,申立てをする人がいないときは,他の法令により「市町村長」に法定後見(後見・補佐・補助)の開始の審判の申立権が与えられています(老人福祉法32条,知的障害者福祉法28条,精神保健及び精神障害者福祉に関する法律51条の11の2)ので,その場合は,市町村長が法定後見の申立てをすることになります。

本件申立てにかかる詳細については,市町村に問い合わせてください

法定後見制度にかかる費用

法定後見制度を利用するには,どのくらいの費用がかかるでしょうか。

申立手数料(収入印紙)800円,登記手数料(収入印紙)2,600円,のほかに連絡用の郵便切手(最寄りの家庭裁判所に確認してください)が必要です。

また,法定後見制度の「後見」,「保佐」,「補助」の3類型のうち,「後見」と「保佐」では,本人の判断能力の程度を医学的に確認するために,専門家の医師による鑑定を行う必要があるので,鑑定料が必要になります。

鑑定料は,個々の事案によって異なりますが,一般的には5万円~10万円程度といわれています。

 

次回は,法定後見等の手続のながれ,かかる期間について解説します。

法定後見制度を利用する手続き,成年後見制度の登記について解説します。法定後見制度を利用する手続きの流れと期間について,成年後見制度の登記について解説します。...