亡くなった人が遺言を残してない場合の遺産分けについては,すでに説明したとおり,遺産分割協議が必要となります。
そこで,今回と次回の2回にわたって遺産分割協議について基本的なことを解説します。
遺産分割協議について
残された相続人間で「誰に」「どの遺産を」「どのような割合で」「どのように」分けるかについて話し合います。
つまり,遺産分割協議を行って決めることになります(民法907条第1項)。この遺産分割協議,「法定相続分に応じて分ける」という話になれば,「法律に基づいた遺産分けなら仕方がない」として,相続人間に不満はなく円満に収まる場合が多いと思われます。
しかしながら,遺産分割協議のほとんどは,法定相続分に従うことなく,「相続人ごとの事情を考慮して個々具体的に分けたい」とするものになるため,相続人である兄弟姉妹間において
父の面倒を見たのは長女の私だから他の兄弟より多く財産がほしい
長男は父から住宅資金を援助してもらったから長女より相続分は少なくてよい
などと,遺産分けの内容で苦慮してしまうのです。
遺産分割協議の原則とは
遺産分割協議は,相続人の全員が参加して協議し,その協議内容につき全員の同意がなければ成立しない,「相続人全員参加・全員合意」の大原則があります。
そのため,相続人の中に行方不明者がいる場合は,相続人全員がそろわず遺産分割協議ができません。
その場合はどうしたらよいのか。
行方不明の相続人がいるときの対処
この場合は,他の相続人が家庭裁判所に不在者財産管理人を選任してもらうよう申立てをします。この申立てにより選任された不在者管理人は,行方不明の相続人の財産の目録を作り,これを保管できる権限があります。
また,不在者管理人は家庭裁判所の許可を得れば,行方不明者に代わって他の相続人と遺産分割協議をすることができます。なお,行方不明者の生死が7年間不明であった場合は,親族等は家庭裁判所に「失踪宣告」の申立てをすることができます。
この申立てにより「失踪宣告を受けた者」は7年の期間満了時に死亡した者とみなされ,戸籍謄本にもその旨記載されますので,その者を相続人から除外した上で遺産分割協議をすることができます。
遺産分割協議が成立したときは,速やかに遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書には,相続人全員が署名・押印(実印にて)し印鑑登録証明書を添付します。
遺産分割協議書が作成されて,やっと遺産分けの内容を実現する(家や土地の名義変更や預貯金等の解約・払戻しをする)ことができるのです。
遺産分割協議は,原則として,相続人全員の同意を得ることができないと,協議は進まない。