前回に続き自筆証書遺言の保管制度について説明します。
今回は,自筆証書遺言の法務局における保管について解説いたします。
法務局による遺言の保管および情報の管理について
保管申請がなされた遺言書については,法務局の施設内において原本を保管するとともに,その画像情報等の遺言に係る情報(画像データ)を管理します(保管法第6条,7条)。
遺言書の保管の有無,照会及び相続人等による証明書の請求等について
遺言者死亡後に,相続人や受遺者らは,全国にある法務局において,遺言書が保管されているかどうかを調べること(この場合は,「遺言書保管事実証明書」の交付請求をする・保管法第10条),遺言書の写しの交付を請求すること(この場合は,「遺言書情報証明書」の交付請求をする・保管法第9条)ができ,また,遺言書を保管している法務局において遺言書を閲覧することもできます(保管法第9条)。
ところで,遺言書を閲覧したい場合に,遺言書が保管されている法務局が遠方にあるときはその法務局まで行かなければならないかということですが,遺言の閲覧の方法として,遺言原本を閲覧する方法のほか,モニターで遺言書を閲覧する方法があります。モニターの方法による場合には,全国どこの法務局においても閲覧が可能ですから,最寄りの法務局においても遺言書の閲覧ができます(上記「法務局による遺言の保管及び情報の管理について」参照)
上記により,遺言書の閲覧や「遺言書情報証明書」の交付がされると,法務局は,他の相続人等に対し,遺言書を保管している旨を通知します(保管法第9条)。
本制度により法務局に保管されている遺言書については,遺言者の死後における家庭裁判所の検認(民法1004条第1項)は不要となります(保管法11条)。その理由は,保管申請の際,法務局において遺言書の外形的確認(全文・日付・氏名の自書,押印の有無や本制度によって定められた遺言書の様式に従って作成されているかどうかなどの確認)が行われているからです。
遺言書の保管申請等の手数料
遺言書の保管申請は一件につき3900円,遺言書保管事実証明書は一通につき800円,遺言書情報証明書は一通につき1400円,遺言書の閲覧請求(原本)は一回につき1700円などとなります。
本制度の活用について
本制度は,自筆証書遺言にかかる遺言書を法務局に保管するという選択肢を増やすことにより,遺言の利用を促進し,相続をめぐる紛争を防止する観点から導入されたものであります。自筆証書遺言を作成したら必ず法務局に預けなければならないということではないから,従来どおり自宅等で保管しても差し支えありません。
もちろん,自宅等で保管する場合は,上記ポイントのところが適用されないので,遺言者の死後における家庭裁判所の検認(民法1004条第1項)は必要となりまので,念のため申し添えます。